リーグも残すところ2ヶ月となり、プレイオフ進出に向けて激戦が繰り広げられている。現在首位は大阪だが、2位新潟が得失点差でぴたりとマーク。そして3・4・5位争いは、4ゲーム差の中に3チームがひしめき合うという、大混戦の様相を呈してきた。いったいどのチームがプレイオフへの切符を手にするのか!?終盤戦の展望をバスケットボール解説者、河内敏光氏が大胆に予想する。
(インタビュー/構成:柴田愛子)

〜現在の各チームの印象について

Q:リーグも終盤戦に突入してきましたが、順位争いは大混戦です。まず現在首位を走る『大阪エヴェッサ』についてはいかがですか

大阪エヴェッサ河内:大阪はすごく安定している。それは下位チームに取りこぼすことがない安定感。まさに隙がないという感じだね。新潟は2月11日の大分戦のように、ポロッと負けてしまう時もあるけれど、大阪はそういうイメージがない。スタメンやメンバーチェンジは特定のメンバーで固まっているが、得点に関していえば出場した選手が満遍なくとっている。このまま首位を走ると思うね。

Q:『強さの大阪』に対して『試合巧者の新潟』というイメージがありますが

新潟アルビレックス河内:間違いないね。廣瀬HCの考え方は、まだ現段階では順位にはこだわってはいない。最終的に優勝するという目標は変わっていないだけ。しかし必ずファイナルでは大阪とあたると踏んでいる。その大阪相手に変な負け方だけは出来ないという気持ちはかなり強い。新潟は、5年前からプロとしてやっているというプライドをもっているだけに「絶対負けられない」と・・・。だから先週行われた(2/25、2/26)大阪との直接対決では、すごくいい内容の試合をしていたね。

Q:1勝1敗で痛みわけという結果でしたが

河内:いやぁ〜大阪にとっては大きな1敗でしょう。連勝していれば、新潟に3勝1敗と勝ち越せたけれど、これで五分にされてしまった。しかもこの後、新潟のホームで4試合も残っている。新潟はホームで負けなし(現在12勝0敗)だからね。大阪にとってはどうしても2連勝したかっただろう。それを天日HCも十分わかっていただけに、最後は熱くなってテクニカルファウルを犯してしまったのかもね。

東京アパッチQ:さて、3位に浮上した『東京アパッチ』に関してはいかがですか

河内:ここ最近の東京はチームが下降ぎみだった。特に2/11・12の大阪戦では、自分たちのバスケットが出来ないままに、叩きのめされたことで、モチベーションまでも落ちていたと思う。そんな時に試合が1週空いたことで、しっかりと調整が出来たのが有利に働いた。気持ちも切り替わって、いい準備が出来た状態で、当面のライバルである仙台戦に望めたから、あの2連勝につながったと思う。これでまた東京は息を吹き返すね。そんな東京の爆発力はどのチームもいやだろうな。

Q:反対に東京にとって、「浮き沈みが激しい」ということは不安材料では

河内:彼らの浮き沈みが激しい原因は、オフェンスでミスした選手がすぐにディフェンスに戻らないから。つまり、戻りが遅い。東京のような攻撃型の早いテンポのチームは、自分たちの得意なスタイルを相手にやられると一気に崩れる。東京は、オフェンスはみんな一生懸命やるけれど、ディフェンスを一生懸命やっている時間帯が少ない。いい時はいいけれど、駄目な時はどんどん点を取られる。それでジョン・ハンフリーやウイリアム・ピペンにミスが続くとメンバーチェンジする。そうするとオフェンス能力がガクッと落ちて悪循環に陥っていく。

Q:それでは4位に後退した『仙台89ERS』はいかがでしょうか

河内:一番粘りがあるのが仙台。これという決め手がないかわりに、どこから出てくるかわからない。形がない分、相手にとっては接戦になると一番嫌なチーム。あと、ターンオーバーが一番少ないチームでもあるね。派手なことをやらないから、確実性があるといえる。でもここ最近、いやな負け方が続いている。しかも接戦に持ち込んでいない。仙台の持っていた今までの粘りがなくなってきているように感じる。そこが気になるね。

Q:ディオウフ選手の怪我が思ったよりも長引いていますしね

仙台89ERS河内:ディオウフ選手がいないのは、とても大きな痛手。その他の外国人2人を休ませられないからね。でも反対にここ最近、大西裕之(写真)が台頭してきたりと、新たなオプションが増えてきたのは楽しみなところ。特に大西選手は何をするかわからない分、相手チームもとまどっちゃうんじゃない(笑)。

Q:そして、プレイオフ進出に向けて浮上してきたのが『大分ヒートデビルズ』ですが

大分ヒートデビルズ河内:チームの印象はガラッと変わったね。ヘッドコーチが代わって、やることが明確化したからだと思う。やらなくてはいけないことを、オフェンスでもディフェンスでもたくさん要求せず、的を絞って指示を出している。選手にとってはやろうとしていることが分かりやすくなって、気持ちよくバスケットができている。

Q:チームのスタイルにも変化はありましたか

河内:今まではホプキンスが動き回っている印象があったけれど、今は鈴木裕紀や三友康平に打たしておいて、ホプキンスがリバウンドを取りにいく形に変わってきた。特に鈴木裕紀は3ポイントラインから一歩内側に入ったところのシュート率がいい。最近は3ポイントの得点率も上がってきたから、相手はマークしづらいんじゃないかな。あとは以前のように、ミスをしてもなかなかメンバーを変えない状況とは違って、駄目な選手はどんどんメンバーチェンジさせられる。いい感じでチームが循環しているように感じるね。

Q:しかし大分はいい形で勝利しても、それが次に続かないという印象がありますが

河内:確かに今まではそうだったかもしれない。でも今回(2/25・26)埼玉に2連勝したのは大きい。今までの大分だったら1戦目接戦で勝っても、次の試合は負けているかもしれない。しかし埼玉との2戦目は圧勝で勝つことが出来た。この結果が、「自分達は勝てるんだ、連勝できるチームなんだ」という自信を植え付けてくれたと思う。結果がついてきたからこそ「自分達の目指す方向で間違いないんだ」と確信をもってプレー出来ている。大分は今後、台風の目になる。

Q:さて、埼玉はまだ苦しい状況から抜け出すことが出来ていません

埼玉ブロンコス河内:ここまで負けが込んでしまうと、接戦で勝つんじゃなくて、ぶっちぎりの大差で勝たなくては変われない。もう技術的なものじゃない、メンタルのみ。10点差がついたから、相手の出方を見るのではなく、離せる時に一気に離して大差で勝たなきゃいけない。今、埼玉がやるべきなのは、相手をどう抑えるかじゃなく、自分たちのバスケットを40分間やりきるということ。

Q:新しいオフェンスシステムに取り組んでいる埼玉ですが

河内:システムを変えるのは悪いことじゃない。でも、早く意思統一しなくてはいけない。今の埼玉はインサイドにボールが入った時に、そこで基点となる選手がいない。埼玉は素晴らしいシューターがそろっているんだから、わざわざインサイドで無理しないで、そこを基点として攻撃をしかけていけばいい。また、中で自由に動く選手がいないことで、3ポイントラインに5人並んでしまうことが多い。攻撃が単調になってしまうし、相手もプレッシャーをかけやすい。だからいくら外からシュートを狙っても成功率は低くなる。

Q:以前ならデービッド・ベンワーがインサイドで基点となっていましたが

河内:イナック・デイビスであれ、マーカス・トニーエルであれ、得点することに意識がいっている。もっと基点となることの重要性を伝えなければいけない。もし、自分がHCなら、清水太志郎をミドルポストで使って基点とする作戦もある。ミスマッチで有利な選手をインサイドにいれるのも面白い。

Q:埼玉が浮上のきっかけをつかむために一番必要なものは

河内:インサイドで基点となる選手が必要。そしてとにかく1勝すること。相手のことを考えずに、自分たちのスタイルを貫くことに専念するだけ。

★後編ではプレイオフ出場争いや、大阪・新潟の1位争いなどに迫ります。

インタビュー/構成:柴田愛子