日本初のプロバスケットボールリーグ「bjリーグ」が開幕し、はや1ヶ月。NHKのNBA解説者・河内敏光氏(bjリーグコミッショナー)に、ここまでの戦評を伺うとともに、今後の展開をズバリ予想してもらった。

ワシントン……開幕して1ヶ月ですが、ここまでの戦いぶりをどうご覧になりますか?

現在首位の大阪は、ホームでは2勝2敗だけど、アウェイで5勝0敗。なぜ、あれだけアウェイで調子がいいか。それはリン・ワシントン(写真)という新潟アルビレックス出身の選手の存在が大きいと思うね。彼は敵地でブーイングがおこればおこるほど力を発揮する選手。彼の凄いところは、スーパープレーが出た時、「もっと盛り上がれ」と観客を巻き込んでチームを盛り上げることが出来る。

そして33番のPG、マット・ロティックもいい。いいPGがいるチームは、必ずゲームが安定する。ゲームにはいい時と悪い時の波がある。悪い流れになる手前でそれを察知しいち早く修正できるかどうか。マット・ロティックはそれが出来る。だから大阪は安定した戦い方が出来るんだろう。

ガードの働きという点でいうと、埼玉は物凄くもったいない戦い方をしている。清水耕介と清水太志郎の両ガードがいい動きをしている時でも、同時に二人とも代えてしまうことがある。どちらか一人が残っていれば今までの流れを引き継ぐことが出来るけど、二人変えてしまうとリズムが本当に狂ってしまう。

……そういった選手交代も含め、ベンチワークは重要ですね

ブライアントHCすごいなぁ、と思うヘッドコーチは東京のジョー・ブライアント(写真)。選手の起用法がいい。大場や信平、勝又あたりの今後伸びる可能性が十分にある選手を上手く使っているし、それによって日本人もチーム全体のモチベーションも上がっている。彼の存在は東京だけじゃなく、bjリーグにとってもプラスになっているだろう。

……現在最下位でなかなか波に乗り切れない大分については?

大分は素材のいい選手がそろっているが、それを生かしきれていない。ファウル数が多いことも気になる。それが全部違うファウルならまだしも、同じものばかり。そこが徹底されていない。だから無駄が多い。大分が1月の後半戦の出だし、ここからが大分の開幕だというくらい、心機一転気持ちを変えていかなくてはプレーオフ進出は厳しい。

……3位の新潟の動向も気になるところですが

新潟は飛びぬけて凄い選手はいない。だからこそ満遍なく選手が出場している。例えこれから怪我人が出てきて、7〜8人で戦うことになったとしても、新潟にとっては大きな問題ではないだろう。新潟は絶対プレーオフにいく。廣瀬ヘッドコーチはこの40試合を確実に2位、最悪でも3位を狙っている。彼の中ではレギュラーシーズンであえて1位になる必要はない。プレーオフにいって、最後の最後で刺しきるという考えなんだろう。1位は大阪だと思っているから、いきなり準決勝では当たりたくないと思っている。だから廣瀬ヘッドコーチは間違いなく2位か3位狙いで今後も戦っていくと思う。

……今後の展開で、どんな点に注目したらいいですか?

仙台現在0.5ゲーム差で2位につけて調子のいい仙台(写真)だが、実はまだ大阪・新潟・東京といった上位陣とはあたっていない。だから今週末の首位攻防戦、仙台vs.大阪は見もの。仙台にとっては正念場といえるだろう。この2連戦、仙台が1勝1敗で乗り切ったら、優勝の可能性があるね。

勝敗の鍵は、メンバーチェンジ。どちらのヘッドコーチが外国人選手を早めに下げるか。そしてその時に、相手チームのヘッドコーチがどう対応するかが、ポイントになってくると思う。でも、こんなこと書いたら両チームのヘッドコーチが見て、「あーそうしよう」ってなっちゃうか(笑)。今週末の首位攻防戦で勝った方が、前半戦を1位で走るだろう。

(インタビュー/文:柴田愛子 Photo:アフロスポーツ/bj-league 12月16日掲載)