レギュラーシーズンを終え、残すはプレイオフのみ。富山、高松と新規参入の2チームを加えて臨んだ2年目はいったいどんなシーズンだったのだろうか。BSフジのbjリーグTVの解説でおなじみ河内敏光氏が今シーズンを振り返る。
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大阪は開幕早々つまずいたが…
去年のチャンピオンだけに、どのチームも大阪対策は十分練られていた。大阪はなかなか自分達の得意とする早い展開にもっていけなくて、気がついたら序盤に5連敗。自分達のバスケが出来ない上に勝てない。なおかつ負けた時にチームを鼓舞して奮い立たせる選手が大阪にはいなかった。それが5連敗した原因だと思う。そんなどん底の大阪を救ったのが田村。彼が加入したことで一気にチームがまとまった。連敗をストップしたのも、12月中旬の9連勝も彼が裏でチームを支えていたから。長いシーズンを戦っていくためには、戦力だけじゃなくチームをまとめる精神的支柱が必要ということだろう。
新潟は非常に苦しんだシーズンだった
仙台との開幕4連戦は調子が良かったが、その後一気に崩れていった。ケガ人の続出などあったが、一番の原因は若手が思ったより伸びなかったこと。佐藤のスランプに加え、池田の故障、小菅も波がありすぎた。他のチームが着実に戦力アップしているのに、新潟だけは下からの突き上げがなく、現有勢力で足踏みをしてしまったという感じ。今まで培った経験と勝負強さでなんとか2位に滑り込んだけど、非常に危なかったといっても過言じゃない。シーズンが終わる間際になって、やっと本来の強さが戻ってきた。長いトンネルを抜けたのがプレイオフ前だった。
開幕カードに助けられたのは高松
大分となら最悪でも1勝1敗、うまくいけば連勝できる相手だと思っていた。戦力を考えれば、自分達のライバルは大阪、新潟だけという意識でbjリーグに参戦したと思う。ところがいきなりの連敗。「こんなはずじゃなかった」と選手もスタッフも自分達の甘さに気づくことが出来たのが大きな収穫だった。これが大阪相手の2連敗では意味がない。相手が大分だったところに意味がある。相手がどこであれ気を抜かないということに気づかせてくれた。それに気づかなかったらプレイオフにはいけなかったに違いない。高松がプレイオフにいけた要因はもう一つある。前半戦終わった時点で「このままの戦力でいったらプレイオフにいけるかどうか分からない」という危機感を持ち、中川を取ったのが非常に大きかった。中川がいなかったら3位にはいなかっただろう。
プレイオフ最後の切符を手にした大分
大分の強さはマイキー・マーシャルとアンディー・エリスの2人が握っている。特にマーシャル。彼は1番〜5番までこなせるオールラウンドプレーヤー。どのポジションでもカバーできるからチームは安定して崩れない。加えてエリスはインサイドでも勝負できるし、3Pも得意。抑えようにも変幻自在にプレーを変えてくるから、タチが悪い。だが、あの2人は抑えられないが、反対にどちらかが欠けると厳しくなるだろう。今年の大分は相手をロースコアーに引きずりこめるし、100点ゲームの爆発力もある。対戦相手によって様々な戦い方が出来るのも大分の強み。プレイオフはどんな戦いになるか全く読めない。
新潟に苦しめられたのが仙台
新潟が強さを発揮した開幕4連戦。そこに当たってしまったのが仙台だった。これはアンラッキーとしか言いようがない。仙台自体は今シーズンそんなに悪くなかった。最初から黒星が先行したことによって、5割に戻すことに躍起になってしまった。しかし、結果は5割を行ったり来たり。「勝率5割」を意識しすぎたことで余裕のない戦い方をしていたように見える。ゲームスケジュールは変えられないが、もし開幕4連戦のカードが違っていたら、もう少し上位に食い込んでいたかもしれない。
埼玉は別のチームかと思うぐらい変わった
開幕の頃はフィーリーを高く評価していたが、彼は山根HCの求めるトランジションの早い、走るバスケットにはマッチしなかった。そこで走れるゴードンをスターターに起用。それがマッチした。それ以降、埼玉の調子も右肩上がり。また、選手起用が上手くいき始めたのには、山根HC自身が成長したのも大きい。シーズン前半は余裕のなさが感じられたが、1年目のヘッドコーチはそういう状況に陥りやすい。しかし、後半になって徐々に選手の資質を生かしたベンチワークが出来るようになってきた。もし、レギュラーシーズンがあと20試合あったらプレイオフ争いにも食い込めただろう。
富山、ワードを生かせるチームであれば…
今年は初のオールスターがあったが、選ばれた選手が後半戦で活躍していたのが印象的だった。特に富山のワードはオールスター以降、輪をかけてよくなった。彼本来のポジションはスモールフォワードかパワーフォワード。だが、富山だとメンバーの都合上、センターをやらなければいけない。そのためしっくりしていなかった。だが、オールスター以降、富山は彼を中心にぐんぐん良くなっていった。それは彼が変わったからだと思う。日本に馴染んでいる他チームの外国人選手と話すことで、チームプレーの精神を学んだのかもしれない。彼は3Pも打てるし、自分でも持っていける。もし彼がセンターでなく、フォワードとしてプレーすることが出来ていたら、富山はプレイオフに出ていたかもしれないし、得点王もワードが取っていたかもしれない。
外国人問題で最下位に沈んだ東京
オールスターでブレイクした選手といえば、東京の青木康平もその一人。フリースローの成功率93%はものすごい数字。今季のNBAの成功率よりも良い。オールスター以降はフリースロー以外のシュートも確実に入るようになったから、相手がファウルをせざる得なくなった。となると彼の得意のフリースロー。面白いように彼のペースになるというわけだ。それでも東京は勝てなかった。去年の課題だったリバウンドを取るために連れてきたビリングスが帰国してしまったのが、ブライアントHCにとって大誤算だっただろう。その後も外国人選手の入れ替えが激しすぎたのが、東京が低迷した最大の原因だ。そういうチーム状態の中で青木や仲摩が伸びたのが救いだった。
インタビュー/文:柴田愛子
※河内氏によるプレイオフ展望に続く…
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大阪は開幕早々つまずいたが…
去年のチャンピオンだけに、どのチームも大阪対策は十分練られていた。大阪はなかなか自分達の得意とする早い展開にもっていけなくて、気がついたら序盤に5連敗。自分達のバスケが出来ない上に勝てない。なおかつ負けた時にチームを鼓舞して奮い立たせる選手が大阪にはいなかった。それが5連敗した原因だと思う。そんなどん底の大阪を救ったのが田村。彼が加入したことで一気にチームがまとまった。連敗をストップしたのも、12月中旬の9連勝も彼が裏でチームを支えていたから。長いシーズンを戦っていくためには、戦力だけじゃなくチームをまとめる精神的支柱が必要ということだろう。
新潟は非常に苦しんだシーズンだった
仙台との開幕4連戦は調子が良かったが、その後一気に崩れていった。ケガ人の続出などあったが、一番の原因は若手が思ったより伸びなかったこと。佐藤のスランプに加え、池田の故障、小菅も波がありすぎた。他のチームが着実に戦力アップしているのに、新潟だけは下からの突き上げがなく、現有勢力で足踏みをしてしまったという感じ。今まで培った経験と勝負強さでなんとか2位に滑り込んだけど、非常に危なかったといっても過言じゃない。シーズンが終わる間際になって、やっと本来の強さが戻ってきた。長いトンネルを抜けたのがプレイオフ前だった。
開幕カードに助けられたのは高松
大分となら最悪でも1勝1敗、うまくいけば連勝できる相手だと思っていた。戦力を考えれば、自分達のライバルは大阪、新潟だけという意識でbjリーグに参戦したと思う。ところがいきなりの連敗。「こんなはずじゃなかった」と選手もスタッフも自分達の甘さに気づくことが出来たのが大きな収穫だった。これが大阪相手の2連敗では意味がない。相手が大分だったところに意味がある。相手がどこであれ気を抜かないということに気づかせてくれた。それに気づかなかったらプレイオフにはいけなかったに違いない。高松がプレイオフにいけた要因はもう一つある。前半戦終わった時点で「このままの戦力でいったらプレイオフにいけるかどうか分からない」という危機感を持ち、中川を取ったのが非常に大きかった。中川がいなかったら3位にはいなかっただろう。
プレイオフ最後の切符を手にした大分
大分の強さはマイキー・マーシャルとアンディー・エリスの2人が握っている。特にマーシャル。彼は1番〜5番までこなせるオールラウンドプレーヤー。どのポジションでもカバーできるからチームは安定して崩れない。加えてエリスはインサイドでも勝負できるし、3Pも得意。抑えようにも変幻自在にプレーを変えてくるから、タチが悪い。だが、あの2人は抑えられないが、反対にどちらかが欠けると厳しくなるだろう。今年の大分は相手をロースコアーに引きずりこめるし、100点ゲームの爆発力もある。対戦相手によって様々な戦い方が出来るのも大分の強み。プレイオフはどんな戦いになるか全く読めない。
新潟に苦しめられたのが仙台
新潟が強さを発揮した開幕4連戦。そこに当たってしまったのが仙台だった。これはアンラッキーとしか言いようがない。仙台自体は今シーズンそんなに悪くなかった。最初から黒星が先行したことによって、5割に戻すことに躍起になってしまった。しかし、結果は5割を行ったり来たり。「勝率5割」を意識しすぎたことで余裕のない戦い方をしていたように見える。ゲームスケジュールは変えられないが、もし開幕4連戦のカードが違っていたら、もう少し上位に食い込んでいたかもしれない。
埼玉は別のチームかと思うぐらい変わった
開幕の頃はフィーリーを高く評価していたが、彼は山根HCの求めるトランジションの早い、走るバスケットにはマッチしなかった。そこで走れるゴードンをスターターに起用。それがマッチした。それ以降、埼玉の調子も右肩上がり。また、選手起用が上手くいき始めたのには、山根HC自身が成長したのも大きい。シーズン前半は余裕のなさが感じられたが、1年目のヘッドコーチはそういう状況に陥りやすい。しかし、後半になって徐々に選手の資質を生かしたベンチワークが出来るようになってきた。もし、レギュラーシーズンがあと20試合あったらプレイオフ争いにも食い込めただろう。
富山、ワードを生かせるチームであれば…
今年は初のオールスターがあったが、選ばれた選手が後半戦で活躍していたのが印象的だった。特に富山のワードはオールスター以降、輪をかけてよくなった。彼本来のポジションはスモールフォワードかパワーフォワード。だが、富山だとメンバーの都合上、センターをやらなければいけない。そのためしっくりしていなかった。だが、オールスター以降、富山は彼を中心にぐんぐん良くなっていった。それは彼が変わったからだと思う。日本に馴染んでいる他チームの外国人選手と話すことで、チームプレーの精神を学んだのかもしれない。彼は3Pも打てるし、自分でも持っていける。もし彼がセンターでなく、フォワードとしてプレーすることが出来ていたら、富山はプレイオフに出ていたかもしれないし、得点王もワードが取っていたかもしれない。
外国人問題で最下位に沈んだ東京
オールスターでブレイクした選手といえば、東京の青木康平もその一人。フリースローの成功率93%はものすごい数字。今季のNBAの成功率よりも良い。オールスター以降はフリースロー以外のシュートも確実に入るようになったから、相手がファウルをせざる得なくなった。となると彼の得意のフリースロー。面白いように彼のペースになるというわけだ。それでも東京は勝てなかった。去年の課題だったリバウンドを取るために連れてきたビリングスが帰国してしまったのが、ブライアントHCにとって大誤算だっただろう。その後も外国人選手の入れ替えが激しすぎたのが、東京が低迷した最大の原因だ。そういうチーム状態の中で青木や仲摩が伸びたのが救いだった。
インタビュー/文:柴田愛子
※河内氏によるプレイオフ展望に続く…