ファイナル白熱したセミファイナルを経て、一夜明けたファイナル当日。アリーナでは高松のブルーとエヴェッサのレッド、2色が大きな塊となって、熱気を帯びた声援を送る。

セミファイナルの激闘を勝ち抜き、ファイナルのコートに立ったのはディフェンディングチャンピオン、大阪エヴェッサと今シーズン新規参入した高松ファイブアローズ。初代王者と1年目のチャレンジャーという構図が出来上がった。戦前の予想は大阪優勢。しかしレギュラーシーズンで大阪が唯一負け越したのは高松だった。相性の良さに加え、セミファイナルで新潟を破った勢いは一発勝負のファイナルでは脅威となる。「失うものはない、挑戦者としてぶつかっていきたい」(高松・岡田)と選手に気負いはない。対する大阪は新加入のチームには負けられないという初代王者の気迫が漂っていた。

4月22日(日)16:15にティップオフとなった試合は攻守が激しく入れ替わる激戦。立ち上がりから予想を上回るスピーディな展開に観客は興奮し、声援はさらに大きくなっていく。3Pの応酬にインサイドの激しいせめぎ合い、ダンクがリングを揺らしたかと思えば、ブロックショットでボールを叩き落す。もとよりサイズが大きく、得点力の高い両チームではあるがファイナルがゆえの、気迫のこもったプレーがさらに会場を沸かせた。

「昨日が競った試合で冷や冷やしたから、今日は引き締めて臨めた」と波多野が言うように、昨日とは明らかに違う大阪の姿がそこにはあった。得意とする早い攻めと堅いDF。コートに立つプレーヤーが個々の役割をしっかり果たし、隙を見せないのはさすが。対する高松も負けてはいない。満遍なく点が取れる外国人プレーヤーに加え、この日は中川が復活。前日のセミファイナルでは風邪で点滴をうって臨んだ中川。体調の悪さからか精彩を欠いていた。しかし会場の熱気とブースターの声援が力を与えたのか、放つ3Pは面白いようにリングに吸い込まれていく。彼の得点が高松を勢いづかせていた。

しかし、それを上回るシュート力をみせつけたのは、MVPを受賞したディビット・パルマー。3Pは7本中5本を決める成功率。それに加え、相手に流れが傾きかけた時に必ずといっていいほど決めてくるだけに、高松にとってたちが悪い。「チームメイトのサポートがあって出来たこと」とパルマーは口にしたが、彼の決定力が高松をねじ伏せたといっても過言ではないほど、その力は大きかった。結局、第1Qについた6点ビハインドを高松が終始追いかける形で試合は進み、最後は大阪が大舞台での勝負強さで高松を突き放した。しかし最終Qで3点差にまで詰め寄る底力を見せた高松。最後まで会場を沸かせた彼らの戦いぶりに両ブースターから惜しみない声援と拍手がおくられた。

再び王座についた大阪・天日HCは満面の笑みで記者会見場に現れた。「(今シーズン)出だしが悪く序盤で5連敗し、いろいろあった中でここまできた。ただただ嬉しいの一言です」苦しんだシーズンだっただけにその喜びは格別だろう。今シーズンの大阪は試合に出ている外国人プレーヤー達が一番に練習場に顔を出し、汗を流していたそうだ。彼らの姿をみて他の選手たちは感化され切磋琢磨することが出来たという。「試合に出ていなくても全員で戦っていた」と石橋キャプテンが振り返るように、チームの結束力と信頼感が、あの勝負強さを生んだのだろう。再び追われる立場となった大阪だが、来年はさらに強固なチーム力でシーズンを引っ張ってくれるに違いない。

2年目を迎えたプレイオフ。その戦いぶりは接戦に次ぐ接戦。結果は大阪が2年連続2度目の優勝を手にしたが、その差はわずかなものだった。例え、参入1年目であっても優勝は遠くないことを証明してくれた。来季は福岡と沖縄を含めた10チームで戦うbjリーグ。一体どんな戦いが繰り広げられるのか、更なる盛り上がりを期待したい。

(取材/文:柴田愛子)

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●河内コミッショナーコメント

プレイオフセミファイナルでは、各チームが緊張して本来の力が出せていなかったように見える。しかし、ファイナルでは両チームともチャンピオンになるぞという意識が前面に出て、その集中力が緊張を上回っていたと思う。非常にいいファイナルだった。

3位決定戦については、新潟がセミファイナルで負けた瞬間に落胆し、力が残っていなかったと思う。大分についてはチャレンジャー精神でぶつかり、行ける所まで行くんだという気持ちでプレーしていた。高松はバランスの取れたいいチームに仕上がっていた。bjリーグでは、アーリーチャレンジ制度を取り入れているが、それによって高松が中川、大阪が仲村を取り、その2チームがファイナルの大舞台に進む結果になった。

将来的にはホーム&アウェイ方式でプレイオフを行うことも検討しているが、今はまだ時期が早い。今後どういう方法をとれば盛り上がるのかを考えていきたい。